【遺留分】遺留分減殺の請求を受けた側の事例
事案の概要
相談者の家系は、代々不動産を複数所有する不動産のオーナーでしたが、相談者の母親が死亡し、相続が発生しました。
相談者の母親は、相談者に大部分の遺産を相続させる旨の公正証書遺言を作成していましたが、死亡する直近の時期に、相談者の親族2名を養子縁組していたことなどから、一部相続人から、遺留分を減少させる目的での縁組であり、無効なのではないか、また、遺言の有効性にも疑問があるとして、争われました。当事務所では、遺産分割・遺留分の総合的な解決の観点からご依頼を受けて、申し立てを受けた調停の対応にあたることになりました。
ポイント・争点
1. 公正証書遺言有
2. 養子縁組の効力に争い有り
解決に至るまで
相続人の一人は、弁護士を付けて争ってきました。
まず、争点の一つであった遺言の有効性については従前介護していたのが相談者である相続人であり、特段、意思能力を否定するような明確な医学的証拠も 提出されなかったことから、遺言が有効であることを前提に協議を進めることをまず確定しました。
次に、死亡の近接した時点での養子縁組の効力も問題になりましたが、養子縁組の効力に関する近時の最高裁判所の裁判例(H29.1.31判決)も参照しつつ、縁組に至ったのは、それなりの事情があることを説明し、縁組が有効であることも前提とした上で協議を進めることを確定しました。
その上で、金銭的な解決が問題となりましたが、まず遺留分を主張する意図が無いか、一定の財産を希望するが、弁護士を付けて激しく権利主張するまでの意思は無い相続人との間で個別に協議を進め、調停外で和解を成立させました。個別に協議を進めて合意を取ることで、最終的に用意しなければならない遺留分に対する価格弁償金を少しずつ確定していきました。
最終的には、弁護士を付けて争っていた相続人との調整が残りましたが、一部不動産を、当事務所が紹介した信用できる不動産業者を通じて売却することで、相続税や弁償金の支払い原資とすることについて事前に相手方弁護士とも調整しました。また、相続税の申告について協力をいただいていた税理士の先生にも協力してもらうことで、遺留分に対する価格弁償の適正な額を確定して合意することができました。これにより、最終的には先代から引き継いできた遺産のほぼ大部分を売却することなく、被相続人の遺志どおり、相談者に遺産をそのまま引き継がせる形での解決をすることができました。